2026年2月時点
この記事では、物価の意義、なぜモノやサービスの価格は変わるのか、インフレーションやデフレーションの意義、必要な政策、個人の対策などについてわかりやすく説明します。

物価とは
「物価」とは、食料品、ガソリン、衣服、家賃、宿泊料など「個々のモノやサービスの価格」ではなく、これらのモノやサービスの価格を集計してまとめた「総合値」のことをいいます。
物価は、その国の経済の体温を示します。
総務省がインターネットなどで発表している消費者物価指数(CPI: Consumer Price Index)を見れば、次のように物価の状況を把握することができます。
(1)総合指数は2020年を100として113.0
前年同月比は2.1%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の下落(2)生鮮食品を除く総合指数は112.2
前年同月比は2.4%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の下落(3)生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は111.5
総務省 消費者物価指数(2020年基準) 2025年(令和7年)12月分概況
前年同月比は2.9%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇
これを見ると、2026年12月の物価指数(総合)は、2020年から13%アップ↑、前年比2.1%アップ↑、前月比0.1%ダウン↓したことが分かります。
モノやサービスの価格はどう決まるのか
「物価」を構成する「個々のモノやサービスの価格」は、主に次の3つの要素によって日々変動します。
- 1 需要と供給のバランス
- 2 原価・費用(コスト)
- 3 競業他社の価格設定
1 需要と供給のバランス
価格は、需要(欲求)と供給のバランスによって変動します。
モノAが欲しい人、サービスBを利用したい人が増えたとき、社会(市場)に供給されているモノAやサービスBの数が変わらなければ、価格は上がります。例えば、リゾートホテルや旅館の宿泊料金は、利用者が増える大型連休の際には上がります。価格を上げても、いつもと同じ(あるいはそれ以上の)顧客数(需要量)を確保できるからです。
他方、社会(市場)に供給されているモノAやサービスBの数が変わらないのに、モノAを欲しい人、サービスBを利用したい人が減ると、価格は下がります。例えば、流行りのブランド酒の代金は、人気が無くなれば下がります。人気があったときの価格のままでは、買ってくれる顧客の数(需要量)を確保できないからです。
2 原価・費用(コスト)
価格は、供給するための原価・費用(コスト)によっても変動します。
モノAが欲しい人、サービスBを利用したい人が増えていなくても、モノAやサービスBを供給するためのコストが上がれば、価格も上がります。例えば、ガソリンについては、需要量が変わらなくても、原油価格、輸入コスト、販売スタッフの人件費などが上がれば、価格も上がります。コストが上がった分価格も上げないと、赤字になってしまうからです。
外国為替レート(為替相場)もコストに重要な影響を与えます。円安傾向が進むと、外国から輸入するモノの価格が上がるため、コストが増加します。逆に、円高傾向が進めば、コストは下がります。
3 競合他社の価格設定
価格は、競合他社の価格設定によっても変動します。
モノAが欲しい人、サービスBを利用したい人が増えていなくても、モノAやサービスBを供給する企業が乱立し、それぞれが競業他社よりも安い値段で提供しようとして価格競争が起きれば、価格は下がります。例えば、ある家電について、需要量が変わらなくても、同じ家電を販売している複数の会社が、それぞれ他社よりも安い値段で販売するとの方針をとった場合、その家電の価格は下がります。
個々の価格と物価の関係
以上のとおり、モノやサービスの価格は、様々な要素によって変動します。
しかし、「個々のモノやサービスの価格」が変動したからといって、直ちに「物価」も同じように変動するわけではありません。
上記のとおり、「物価」とは、モノやサービスの価格の「総合値」だからです。食料品やガソリンの価格が急激に高くなったからといって、必ずしも同じ分だけ物価が上昇しているということにはならないわけです。
インフレーション(インフレ)とは
インフレーション(inflation:膨張)とは、物価が継続的に上昇している状態をいいます。
良いインフレ:ディマンドプル
国民の購買意欲が高まり、モノやサービスへの需要(ディマンド)が高まったことによって物価が上昇することをディマンドプル・インフレ(需要が先導する物価上昇)といい、健全なインフレとされています。
需要が増加することで、企業は価格を上げることができ、売上が上がって業績が良くなります。それにより、増産や設備投資など企業の経済活動が活発化し、賃金・所得も上昇します。賃金・所得が上昇すれば、消費(需要量)がさらに拡大します。このように、ディマンドプル・インフレは、経済の好循環を生じさせます。
ただし、急激な物価上昇(ハイパーインフレ)は、賃金・所得の増加が追い付かず、家計を圧迫しますので、好ましくありません。緩やかなディマンドプル・インフレが安定した理想の経済状態と考えることができるのです。
この点、日本銀行は、2013年に消費者物価上昇率の目標を年2%と定めています。
悪いインフレ:コストプッシュ
他方、企業など生産者のコスト(原価、費用)が増加したことによって物価が上昇することをコストプッシュ・インフレといい、不健全なインフレとされています。
原油、小麦などの原材料価格が高騰したり、輸送費などの費用が増加することによって上昇したコストが、商品やサービスの価格に転嫁されることで物価が上昇します。しかし、価格が上がるだけで賃金・所得の上昇が追い付いてこないため、消費(需要)が落ち込みます。消費が落ち込むと、企業の業績も低迷し、賃金・所得も上がりにくくなり、さらに消費が落ち込みます。このように、コストプッシュ・インフレは、経済の悪循環を生みます。
最悪のインフレ:スタグフレーション
スタグフレーション(stagflation)とは、停滞(stagnation)とインフレーション(inflation)を組み合わせた言葉で、景気低迷とインフレ(物価の継続的上昇)が同時進行する最悪の状態をいいます。
通常、景気が停滞すると、デフレーション(物価の継続的下落)が進む傾向にありますが、原油、小麦等の原材料価格の高騰などによって、不景気の中でも物価が上昇することがあります(上記のコストプッシュ・インフレ)。不景気により賃金・所得が上がらない中で物価が上昇していくため、国民にとって非常に苦しい経済状況といえます。
日本では、1970年代のオイルショック後にこのような状態になったと言われていますが、現在もスタグフレーションに陥っているとする見方もあります。
デフレーション(デフレ)とは
デフレーション(deflation:収縮)とは、物価が継続的に下落している状態をいいます。
モノやサービスが安くなることから、デフレは家計にとって良いことのようにも思えますが、そうではありません。
物価が継続的に下落しているということは、需要に対し供給が過剰になっている状態です。そうすると、企業などは、商品やサービスを購入してもらうために価格を下げなければなりません。価格を下げれば、売上も低下してしまい、その結果、リストラ、失業、賃金・所得の低下などに繋がってしまいます。
国民はムダ使いをやめできる限り貯蓄しようとするため、消費はさらに落ち込みます。消費が低迷すれば、企業はより値下げをしなければならなくなります。このような悪循環をデフレスパイラルといいます。
日本の物価の状況、推移
日本の物価は、戦後の経済復興期やそれに続く高度成長期には高い物価上昇率を継続しました。
しかし、1990年代初頭のバブル経済崩壊後、日本は長期の景気低迷に陥り、物価上昇率は0%台からマイナス1%台が継続する緩やかなデフレ経済に突入しました。
2021年以降のインフレとその原因
ところが、2021年以降、状況は一変し、長年横ばいだった物価は急上昇を始めます。
新型コロナウイルスの蔓延により、世界中でモノやサービスの供給量が急激に減少、不足したことが、物価上昇の要因となりました(需要と供給のバランスが崩れた。)。
また、2022年2月には、ロシアがウクライナに侵攻したことにより、日本(だけでなく世界)にモノが入ってこなくなり、円安傾向が進んだことも相まって、原材料(輸入品)価格が高騰したことも、物価上昇の要因となりました(コストが増加)。

総務省 2020年基準 消費者物価指数

日本銀行 企業物価指数(2025年12月速報)
現在日本で起きているインフレは、上記で述べたコストプッシュ・インフレーション(悪いインフレ)であり、しかも景気が低迷している中でのことであることから、スタグフレーション(最悪のインフレ)に陥っているとの評価も見られます。
インフレに対する政策
インフレーションのコントロールは容易でありませんが、対策としては、日本銀行による金融政策と、政府による財政政策があります。
1 日本銀行による金融政策
日本の中央銀行である日本銀行は、物価の安定を図るために金融政策をとります。
(通貨及び金融の調節の理念)
日本銀行法
第2条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
銀行などの金融機関(市中銀行)が融資に使うカネ(通貨)は、日本銀行(中央銀行)から仕入れています。日本銀行から1%で仕入れた金を2%で企業や個人に貸し付けるイメージです。
そのため、日本銀行は、政策金利を変動させることによって、社会(市場)全体の金利を変動させることができるわけです。
日本銀行が金利を引き下げる↓(金融緩和する)と、各金融機関は日本銀行からの借入を増やし、企業や個人に対する融資を拡大させます。これにより、社会(市場)におけるカネ(通貨)の供給量が増えます。
社会のカネ(通貨)の量が増えると、経済活動が刺激され消費(需要)が増加すると同時に、モノに対するカネの相対的な価値が薄まることで(カネ1=モノ1だったのが、カネ2=モノ1になるイメージ)、物価を押し上げる(インフレ率上昇)効果が期待されます。
日本では、バブル崩壊後のデフレ経済対策として、1999年からゼロ金利政策(政策金利をほぼゼロとする政策)を採用し続けてきました(途中マイナス金利政策もあり。)。
逆に、インフレを抑えようとする場合には、上記と逆のこと、つまり利上げ政策(金融引き締め)を行うことが考えられます。社会(市場)におけるカネ(通貨)の供給量を減少させ、経済活動を鎮静化させて需要を減少させると同時に、モノに対するカネの相対的な価値を高めます(カネ1=モノ1だったのが、カネ0.5=モノ1になるイメージ)。
ただし、上記のとおり、現在の日本のインフレは不景気な状況下において生じているものであるため、安易に利上げをすると、住宅ローンの利率上昇など個人の家計を苦しめたり、企業の経済活動をより停滞させ、更なる不況に陥るリスクがあります。
2 政府による財政政策
政府が、公共事業、補助金、助成金などの歳出を増やすことにより、社会(市場)の消費(需要)を刺激したり資金を増加させることで、物価を押し上げる(インフレ率上昇)効果が期待されます。
また、減税政策も、個人や企業の所得を増加させますので、物価を押し上げる要因になります。
逆に、インフレを抑えようとする場合には、上記と逆のこと、つまり公共事業、補助金、助成金などの歳出を減らしたり、増税政策をとることで、社会における需要と資金を減少させることが考えられます。
ただし、上記のとおり、現在の日本のインフレは不景気な状況下において生じているものであるため、安易に公共事業、補助金、助成金などの歳出を減らしたり、増税すれば、個人の家計を苦しめ、企業の経済活動をより停滞させることになり、更なる不況に陥るリスクがあります。
インフレ時の個人の対策
上記のとおり、インフレーションとは、物価が継続的に上昇している状態をいいますが、モノやサービスの価値が継続的に上昇していくということは、カネの価値が継続的に下がっていくことと同じです。
例えば、それまで100円でリンゴを1個を買うことができていたのが(100円=リンゴ1個)、リンゴ1個を買うのに110円を出さないといけなくなったとき(110円=リンゴ1個)、モノに対するカネの価値が下がったことになります。つまり、インフレ時にカネを現金(タンス預金)や預貯金の形で持っていると、時間の経過とともにどんどんその価値が下がっていってしまうわけです。
そのため、個人のインフレ対策としては、現金や預貯金以外の形、つまり資産をモノで持つということが有効になります。具体的には、金(ゴールド)、銀(シルバー)、白金(プラチナ)などの貴金属投資、マンションなどの不動産投資、株式投資、投資信託、ビットコイン、イーサリアム、ソラナ、XRP(リップル)などの仮想通貨(暗号資産)投資等をすることが考えられます。

