著作物の私的使用の意義、許される範囲、その要件、罰則

2026年2月時点

 この記事では、著作権者の承諾を得なくても著作権侵害とならない、私的使用(私的利用)について、その意義、要件、どこまでが私的使用の範囲として認められるのか、認められない場合の罰則等について解説します。

私的使用

原則:他人の著作物は使用不可

 他人の「著作物」を、その著作者に無断で使用すると、著作権侵害になるおそれがあります(著作権法第21条)。営利目的か非営利目的かは関係ありません。

 「著作物」とは、思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます(著作権法第2条第1項第1号)。書籍、新聞、アニメ、漫画、イラスト、写真、静止画、映像作品、動画、楽曲などがこれにあたりますが、創作性(表現者の個性)が認められないもの、例えばどこにでもあるようなありふれた表現の文章は「著作物」にあたりません。

例外1:保護対象でない著作物を使用する場合

 著作物の中には、保護対象でないものあります。次のような著作物については、使用しても著作権侵害は生じません(著作権法第13条)。

  • 憲法、法律、政令、省令、条例その他の法令
  • 国等が発する告示、訓令、通達等
  • 裁判所の判決、審判、行政の裁決等
  • 上記について国等が作成した翻訳物や編集物

(権利の目的とならない著作物)
第13条 次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。
 一 憲法その他の法令
 二 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人(・・・)又は地方独立行政法人(・・・)が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
 三 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
 四 前3号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの著作権法

例外2:保護期間が過ぎた著作物を使用する場合

 著作権は永久に存続するわけではなく、保護期間(原則として著作者の死後70年)が定められています。保護期間を経過した著作物には著作権がないため、使用しても著作権侵害も生じません(著作権法第51条以下)。

(保護期間の原則)
第51条 著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2 著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第1項において同じ。)70年を経過するまでの間、存続する。著作権法

例外3:私的使用と認められる場合(本題)

 上記のとおり、他人の著作物を無断で使用することはできません。著作権を複製(複写、コピーアンドペースト(コピペ)、インターネットからのダウンロード・プリントアウト、スクリーンショット(スクショ)等)することも著作権侵害にあたります(著作権の内、複製権の侵害となる。)。

(複製権)
第21条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。

著作権法

 もっとも、次の要件を満たす場合は、著作権者の承諾なく複製しても、私的使用(私的利用、私的複製)として著作権侵害にはならないとされています(著作権法第30条第1項)。

  • 1 私的使用を目的とすること
  • 2 その使用する者が複製等をすること
  • 3 除外事由に該当しないこと

 著作物の私的使用として認められる場合には、複製の他、翻訳、編曲、変形、翻案(カスタマイズ)も許されます(第47条の6第1項第1号)。逆に言えば、これ以外の行為、例えば複製等をした著作物をインターネット上にアップロードすること(公衆送信)は、私的使用とは認められません。

著作物のアップロードの注意点の解説はこちら

(私的使用のための複製)
第30条 著作権の目的となつている著作物(・・・)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
(以下省略)

(翻訳、翻案等による利用)
第47条の6 次の各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には、当該著作物について、当該規定の例により当該各号に定める方法による利用を行うことができる。
 一 第30条第1項、第33条第1項(同条第4項において準用する場合を含む。)、第34条第1項、第35条第1項又は前条第2項 翻訳、編曲、変形又は翻案
(以下省略)

著作権法

要件1:私的使用を目的とすること

 私的使用(私的利用)とは、個人的に又は家庭内その他これに準ずる閉鎖的で限られたグループ内、範囲内において使用することをいいます。ここでいうグループ内(範囲内)とは、使用する者の属するグループのメンバー相互間に強い個人的結合関係のある、サークル、同好会等、10人程度が同じ活動や趣味を目的に集まっている限定された少数グループ内をいうものと解されています。

 自分や家族が後で見るためにテレビ番組を録画しておく場合、少数のマンガサークル内のメンバー間でモデルとなるイラスト(他人の著作物)を複写して使用する場合などが典型例です。

 アニメ等のキャラクターを描いたケーキについては、家庭内で食べる分には私的使用の範囲内ですが、他人に販売することは私的使用には該当せず、著作権者の許可が必要となります。

 アニメ等のキャラクターのコスプレについては、ごく限られた仲間内だけで楽しむ分には私的使用の範囲内ですが、大勢が集まるイベントに参加したり、コスプレ写真をインターネット上にアップロードすることは私的使用には該当せず、著作権者の承諾が必要となります。

会社・団体内部、業務上の使用

 企業や団体内部で、書籍、文献、新聞等の著作物を複製(コピー)し、会議、打ち合わせ、商談の資料として使用することは日常的にあり得るところですが、個人的な使用とは言えないとして、私的使用には該当しないと考えられています(東京地裁昭和52年7月22日判決等)。

学校、非営利教育機関内部での使用特例

 他方、学校(幼稚園、小学校、中学校、高校、大学等)や公民館などの非営利教育機関においては、私的使用とは言えないような場合であっても、授業の過程で使用するために必要と認められる範囲において、他人の著作物を複製、公衆送信(アップロード)、公に伝達することができます(著作権法第35条第1項)。

 教師が著作物をコピーしたりインターネットからダウンロードして授業で生徒児童に配布する場合、対象の学生に限定した上で授業の映像や資料をインターネットで配信する場合などがこれにあたります。

 ただし、著作物の全部をコピーしたり、算数ドリルなど児童生徒等が購入することを想定して販売されている教材やソフトウェアなどを複製する等、著作権者の利益を不当に害することとなる場合には著作権侵害となります。

 また、出所を明示する慣行があるときには、出所(出典)を明示する必要があります(第48条第1項第3号)。

 なお、ここで述べた第35条第1項の要件を満たす場合には、私的使用として認められる場合と同様に、翻訳、編曲、変形、翻案(カスタマイズ)も認められます(第47条の6第1項第1号)。

(学校その他の教育機関における複製等)
第35条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における利用に供することを目的とする場合には、その必要と認められる限度において、公表された著作物を複製し、若しくは公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。以下この条において同じ。)を行い、又は公表された著作物であつて公衆送信されるものを受信装置を用いて公に伝達することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該複製の部数及び当該複製、公衆送信又は伝達の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
(以下省略)

著作権法

要件2:その使用する者が複製等をすること

 複製等(複製、翻訳、編曲、変形、翻案)は、使用する者自身が行う必要があります(他者に複製等を頼むことは可能。ただし、下記のとおり業者に依頼する場合には要注意)。

 このような限定がされている理由は、個人的又は家庭内のような閉鎖的な私的領域における零細な使用のみを許容し、私的複製等の過程に外部の者が介入することを排除することで、私的使用の量を抑制するためです。

 いわゆる自炊行為(書籍の背を裁断した上で内容をスキャンし、電子データファイル化すること)は、私的使用の範囲内であれば問題ありませんが、自炊行為を代行する業者に複製を依頼する場合には、その業者が複製者となるため(知財高裁平成26年10月22日判決)、その業者が著作権者の許可を得ていない場合には、この要件を満たさないことになります。

要件3:除外事由に該当しないこと

 私的使用(私的利用)での複製等が許容されるのは、著作権者への経済的打撃が少ないからです。そのため、著作権者への経済的打撃が大きいと考えられる次の4つ除外事由に該当する場合には、私的使用とは認められません。

除外事由①:誰でも使えるように設置された自動複製機での複製

 誰でも使える状態で設置してあるビデオテープの高速ダビング機(今時はほぼ見かけません。)などを用いて複製することは、除外事由に該当し、私的使用目的であっても許されません(著作権法第30条第1項第1号)。

 ただし、当分の間、コンビニのコピー機など、「文献複写」(文書又は図画の複写)のみに用いられる機器は除かれています(同法附則第5条の2)。

一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

著作権法第30条第1項第1号

(自動複製機器についての経過措置)
第5条の2 著作権法第30条第1項第1号及び第119条第2項第2号の規定の適用については、当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする。

著作権法附則

除外事由②:コピーガード機能を解除しての複製

 コピーガード機能を解除して(又は解除されていることを知りつつ)複製することは、除外事由に該当し、私的使用目的であっても許されません(著作権法第30条第1項第2号)。

二 技術的保護手段の回避(・・・)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合

著作権法第30条第1項第2号

除外事由③:違法配信のダウンロード等(音楽、映像)

 海賊版など著作権を侵害したインターネット配信(海外サイトを含む。)と知りつつ、楽曲や映像(映画、アニメ、ドラマ等)をダウンロード、キャプチャ、スクリーンショット等することは、除外事由に該当し、私的使用目的であっても許されません(著作権法第30条第1項第3号)。

三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「特定侵害録音録画」という。)を、特定侵害録音録画であることを知りながら行う場合

著作権法第30条第1項第3号

除外事由④違法配信のダウンロード等(マンガ、書籍、プログラム等)

 海賊版など著作権を侵害したインターネット配信(海外サイトを含む。)と知りつつ、音楽や映像以外の著作物(漫画、イラスト、書籍、論文、写真、コンピュータプログラム等)をダウンロードすることは、除外事由に該当し、私的使用目的であっても許されません(著作権法第30条第1項第4号)。

 ただし、軽微なもの(著作物全体の分量に対しダウンロードされる分量がごくわずかな場合や、画質が荒くてそれ自体では鑑賞に堪えない場合など)や、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別の事情があるものについてのダウンロード等は許されます。

四 著作権(・・・)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作権に係る著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び次項において「特定侵害複製」という。)を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合(当該著作物の種類及び用途並びに当該特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。

著作権法第30条第1項第4号

映画の盗撮防止の特例規制

 私的使用(私的利用)の要件を満たす場合であっても、映画館等で映画(公開から8カ月未満のものに限る。)の録音録画を行うことは、許されません(映画盗撮防止法第4条)。

(映画の盗撮に関する著作権法の特例)
第4条 映画の盗撮については、著作権法第30条第1項の規定は、適用せず、・・・。
2 前項の規定は、最初に日本国内の映画館等において観衆から料金を受けて上映が行われた日から起算して8月を経過した映画に係る映画の盗撮については、適用しない。

映画の盗撮の防止に関する法律

著作権等を侵害した場合の法的責任、罰則

民事上の請求

 著作権等の侵害があった場合、著作権者より、次の請求を受ける可能性があります。

  • 侵害行為の差止請求(著作権法第112条)
  • 損害賠償請求(民法第709条、著作権法第114条)
  • 不当利得返還請求(民法第703条、第704条)
  • 名誉回復措置の請求(著作権法第115条、第116条)
  • アカウント停止(BAN、バン)等請求

刑事上の罰則

 上記の民事責任の他、著作権者の告訴があると刑罰を科せられることもあります(親告罪)。

 著作権の侵害は、10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処され、又は併科されるとされています(著作権法第119条第1項)。

 著作者人格権の侵害は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処され、又は併科されるとされています(同条第2項第1号)。

 違法配信のダウンロード等を行った場合は、2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金に処され、又はこれを併科されるとされています(同条第3項第1号、第2号)。ただし、映画、音楽以外のダウンロード等については、「継続的に又は反復して行った者」に限り罰せられるとされています。

第119条 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(・・・)は、10年以下の拘禁刑若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 一 著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者(・・・)
(省略)
3 次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 一 第30条第1項に定める私的使用の目的をもつて、録音録画有償著作物等(・・・)の著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)又は著作隣接権を侵害する送信可能化(国外で行われる送信可能化であつて、国内で行われたとしたならば著作隣接権の侵害となるべきものを含む。)に係る自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画(以下この号及び次項において「有償著作物等特定侵害録音録画」という。)を、自ら有償著作物等特定侵害録音録画であることを知りながら行つて著作権又は著作隣接権を侵害した者
 二 第30条第1項に定める私的使用の目的をもつて、著作物(著作権の目的となつているものに限る。以下この号において同じ。)であつて有償で公衆に提供され、又は提示されているもの(その提供又は提示が著作権を侵害しないものに限る。)の著作権(・・・)を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の複製(録音及び録画を除く。以下この号において同じ。)(当該著作物のうち当該複製がされる部分の占める割合、当該部分が自動公衆送信される際の表示の精度その他の要素に照らし軽微なものを除く。以下この号及び第5項において「有償著作物特定侵害複製」という。)を、自ら有償著作物特定侵害複製であることを知りながら行つて著作権を侵害する行為(当該著作物の種類及び用途並びに当該有償著作物特定侵害複製の態様に照らし著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合を除く。)を継続的に又は反復して行つた者
(以下省略)

著作権法
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