2026年2月時点
この記事では、為替(かわせ)とは何か、外国為替相場とは何か、円安円高とは何か、円安円高それぞれのメリットとデメリット、外国為替レートが変動する理由、円相場の歴史と現状、円安の対策等について解説します。

為替(かわせ)の意味
「為替」とは、本来、現金を使わずに支払をする方法を意味します。
江戸時代の頃、遠方の人と取引をする際に現金を運ぶと盗賊などに襲われるリスクがあったことから、現金の代わりに両替商が発行する「為替手形」で取引をすることがありました(為替商を通じて代金のやりとりをする。)。これが為替の始まりと言われています。
例えば、現代で行われている振込送金も現金を使わない支払方法ですので、為替の一種ということになります。
外国との為替取引を「外国為替」と言いますが、外国との取引では、例えば、日本がアメリカから100ドルの製品を輸入する場合、日本円でいくら支払えばよいのかが問題になります。
つまり、国際取引をする際には、2国間の通貨の交換比率(交換レート)を決める必要が生じますが、この比率ことを「為替相場」「為替レート」と言います。
それが転じて、単に「為替」と言うと、2国間の通貨の為替相場(為替レート)の意味で使うことが多いです。
円安、円高の意味
円安とは、円の他通貨に対する価値が相対的に小さい状態のことをいいます。
円高とは、円の他通貨に対する価値が相対的に大きい状態のことをいいます。
具体的にいくら以上になると円安、円高というものではなく、価値が下がれば円安、価値が上がれば円高と表現します。
ドルと円の為替相場が1ドル100円のとき、日本人がグアムやハワイに旅行に行き、10万円をドルに両替すると1,000ドルになります。
これが1ドル150円の相場に変わると、10万円をドルに両替しても667ドル(100,000÷150)にしかなりません。
1ドル100円から150円に相場が変わると、ドルに対する円の価値が小さくなったことになりますので、円安になったと表現します(100円から150円に上がったことを捉えて円高になったと表現するのは誤りです。)。
逆に、1ドル150円から140円の相場に変わると、ドルに対する円の価値が大きくなったことになりますので、円高になったと表現します。
円安と円高はどちらが有利か
円安、円高は、立場によって有利になる人、不利になる人がおり、どちらが好ましいとは一概には言えません。FXトレーダーのように、どちらでもよいのでとにかく大きく変動して欲しい立場の人もおり、利害関係は複雑に絡み合います。
輸出は円安が有利、輸入は円高が有利
一般に、円安は、国内で生産した製品やサービスを海外に販売する輸出産業には有利に働きますが、海外から製品、原材料(原油、小麦等)、サービスなどを輸入して国内で加工、販売する輸入産業には不利に働きます。
例えば、1ドル100円の為替相場のとき、100ドルのモノを輸入するには1万円ですが、1ドル150に円安が進むと、100ドルのモノを輸入するための費用が1万5000円に上がってしまいます。同じく1ドル100円の為替相場のとき、100ドルで輸出すると1万円の売上になりますが、1ドル150に円安が進むと、100ドルで輸出すると売上が1万5000円に上がります。
上記とは逆に、円高は、輸入産業には有利に、輸出産業には不利に働きます。
インバウンドは円安が有利、海外旅行は円高が有利
一般に、円安は、訪日外国人にとっては日本での消費コストを下げるため、インバウンド(訪日外国人旅行)需要の増加につながり、国内の観光業や宿泊業などサービス産業にとっては有利に働きますが、日本から旅行や留学で海外に行く場合には不利に働きます。
他方、円高は、海外での消費コストが下がるため、旅行や留学で海外に行く場合には有利に働きますが、インバウンド需要は減少するため、国内の観光業や宿泊業などサービス産業には不利に働きます。
外国為替相場の変動要因
外国為替レートは日々動いていますが、なぜ変動するのでしょうか。
為替相場を決定している要因は、一言でいうとその通貨の需要(欲求)と供給のバランスであり、売られる通貨は安く、買われる通貨は高くなります。
具体的には、以下にあげるような要因が相互に影響し合って相場が作られます。
1 政策金利
一般に、国家間の政策金利に差が生まれると、政策金利が高い国の通貨価値は上がり、政策金利が低い国の通貨価値は下がる傾向があります。
低金利の国の通貨を持っているよりも、高金利の国の通貨を持っている方が価値が増加するため、低金利の国の通貨を売り、高金利の国の通貨を買う人々の動きが起きやすいからです。
ドル円相場でいえば、日本銀行の利上げは円高(ドル安)要因に、利下げは円安(ドル高)要因となり、アメリカFRB(Federal Reserve Board:連邦準備制度理事会)、FOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)の利上げはドル高(円安)要因に、利下げはドル安(円高)要因になります。
アメリカ雇用統計(ドル円限定)
米雇用統計は、毎月米国労働省が発表する、労働市場の動向を示す経済指標です。
米FRBが政策金利を決定するにあたり、景気判断の指標として、個人消費を左右する雇用統計は重要視されています。特に重視されるのは「失業率」(Unemployment Rate)と「非農業部門就業者数」(Nonfarm Payrolls)です。
雇用統計の結果が良いと、個人所得・個人消費が上がり景気が良くなる傾向を示すものして、物価上昇の過熱を抑えるためにFRBが政策金利を引き上げる要因になります。つまり、FRBの利上げ期待が高まり、ドルを買う人々の動きを起こしやすくなります。
逆に、雇用統計の結果が悪いと、FRBの利下げ期待が高まり、ドルを売る人々の動きを起こしやすくなります。
つまり、アメリカの雇用情勢の結果が良ければドル高(円安)要因に、悪ければドル安(円高)要因になります。特に、予想外の数値が出ると大きく変動しやすくなります。
2 貿易収支
一般に、貿易収支が黒字の国の通貨価値は上がり、貿易収支が赤字の国の通貨価値は下がる傾向があります。
通常、輸出をすると輸出先の通貨で代金が支払われますが、受け取った輸出先国の通貨を売って自国通貨に換金する(買う)動きが起きます。輸入ではこの逆の動きが生じます。
そうすると、輸入額より輸出額の方が大きい貿易黒字の場合、トータルで見て自国通貨を買う規模の方が大きくなるため、自国通貨の価値が上がりやすくなるというわけです。
ドル円相場でいえば、対米貿易収支が黒字の場合は円高(ドル安)要因に、赤字の場合は円安(ドル高)要因になります。
3 為替介入
為替介入とは、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が為替相場を安定させるため、外国為替市場で自国通貨や外国通貨を売買することをいいます。
日本におけるドル円相場でいえば、日本銀行により、急激な円安を是正する場合は円買い介入(ドル売り円買い)、急激な円高を是正する場合は円売り介入(政府短期証券を発行して円を調達した上でドル買い円売り)が行われます。
4 物価変動
一般に、インフレーション(物価が継続的に上昇していること)が生じている国の通貨価値は下落する傾向があります。
モノの価値が継続的に上がっているということは、モノに対するカネの相対的価値を下げることになるからです(モノ1=カネ1だったのが、モノ2=カネ1になるイメージ)。
5 その他の要因
上記の他、政府要人の発言、重要な経済指標の発表(特に予想外の結果がでた場合)、国家間の関係性変化の事実などが為替相場に影響を与えます。
円為替レートの歴史と推移
1944年、アメリカニューハンプシャー州のブレトンウッズホテルに連合国が集まり、為替相場の安定化を目的に、ドルを世界の基軸通貨にし、各国の通貨とドルとの交換比率を固定した上で、ドルだけが金(ゴールド)との交換比率を固定する(1オンス35ドル)という、いわばドルを間に挟んだ金本位制にする旨の協定がなされました(ブレトンウッズ体制)。
日本では、戦後の1949年以降、このブレトンウッズ体制のもと、1ドル360円の固定相場制が続きました。
1971年8月、突然、アメリカのニクソン大統領が、米国の慢性的な貿易赤字、金保有高の減少、インフレーション解消等を目的に、ドルと金(ゴールド)の交換停止を発表しました(ニクソンショック)。
これにより、一時的に変動相場制へ移行しましたが、1971年の12月にアメリカワシントンのスミソニアン博物館で10か国会議が行われ、再び固定相場制(1オンス38ドル、1ドル308円)に戻りました(スミソニアン体制)。
その後、スミソニアン体制は崩壊し、日本は1973年2月に変動相場制へ移行しました。
変動相場制になってからドル円は乱高下していましたが、1985年9月、アメリカニューヨークのプラザホテルにおいて、アメリカ、日本、西ドイツ、イギリス、フランスの先進5か国(G5)による会議が行われ、主にアメリカの対日貿易赤字解消を目的として、ドル高を是正し、ドル安へ誘導するために各国が協調して為替介入しようとする(ドルを売ってドルの価値を下げようとする)合意(プラザ合意)がなされたことで、急激に円高へ進みました。

日本銀行 ドル円推移1970~2025
その後は緩やかな円高傾向で推移し、2011年10月に1ドル75円の円高ピークを迎えます。東日本大震災を受け、多額の保険金支払が予想される保険会社と、復旧のための資金が必要な企業が、外貨建ての資産を売却して円に換えるのではないかという予想が市場に広がったためと言われています。
他方、2022年3月からは、アメリカFRBがインフレ抑制のために政策金利を引き上げていく方向へ舵を切ったのに対し、日本銀行はデフレ経済下のダメージを回避するため利上げに慎重な姿勢を示したことから、日米間の金利差が開き、より高い利回りを求める投資資金がドル建て資産へ流入し、円売りドル買いが加速した結果、1989年以来の円安水準に達しました。
日本の現状(悪い円安)
上記のとおり、かつての日本では今よりもはるかに円安の時代がありました。また、上記のように、円安にはデメリットだけでなくメリットもあるため、現在の円安が大した問題ではないようにも思えます。
しかし、残念ながらそうとは言えません。
自動車など国際競争力のある製品を国内から海外へ輸出していたかつての日本は、円安によるメリットを大いに受けて経済成長してきました。
しかし、現在の日本は、少子高齢化が加速し、産業のイノベーションを起こすこともできずに国際競争力が低下している中、生産工場の多くは海外へ進出してしまっており、円安のメリットを十分に受けることができません。
他方、エネルギー資源に乏しく、食料需給率も低く、輸入への依存度が高い日本にとっては、輸入物価の上昇など円安のデメリットばかりが重くのしかかっています。
そして、現在の円安傾向は、米ドルとの関係だけでなく、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、豪(オーストラリア)ドル、カナダドルなどの主要通貨はもとより、これまで発展途上国とされてきた国々の通貨との関係でも進行しており、日本の国力低下の深刻性を物語っています。
少子高齢化の加速で継続的に国際競争力が低下していくことが懸念される日本では、今後もますます円安が進んでいく可能性があります。
円安に対する政策
円安への対応は容易ではありませんが、次の政策が考えられます。
政策金利の引き上げ(利上げ)
上記のとおり、国家間の金利差が円安の大きな要因となりますので、特にアメリカとの金利差を埋めるため、日本銀行の政策金利を引き上げることが考えられます。
しかし、現在の日本は不景気な上にインフレーション(物価の継続的上昇)が進行しており、安易に利上げをすると、住宅ローンの利率上昇など個人の家計を苦しめたり、企業の経済活動をより停滞させ、更なる不況に陥るリスクがあります。
このような状況下において、2022年3月、日本銀行は、初の「連続指値買いオペレーション」を実施しました。
連続指値買いオペとは、日本銀行が、一定期間連続で、指定した利回り(指値)で、各金融機関が保有している国債を無制限に買い取ることにより、市場に資金を供給する公開市場操作のことをいいます。
買いオペを実施すると、国債を買い取られた各金融機関へ強制的にカネが供給されるため、銀行などの各金融機関が、増えたカネを個人や企業になるべく多く貸し出そうとして、金利(利率)を下げる効果が期待されます。
つまり、買いオペは利上げとは逆行する動きとなりますので、市場に対し利上げをしない方向性を示すことになります。実際、買いオペを行ったことにより、市場から日本銀行は利上げしない(利上げできない)と受け止められ、円売りが生じ、より円安を助長する結果を招きました。
日本銀行の為替介入
上記で述べた為替介入により、政府と日本銀行が外国為替市場において円買いを行うことで、円安を是正する効果が期待できます。
しかし、相場を動かすには多額の資金が必要な上に、一時しのぎにすぎないため、抜本的な解決にはなりません。また、自国通貨の為替レートを人為的に操作することになりますので、やりすぎると国際的な信頼を失いかねません。
国際競争力の強化
多くの通貨に対して円安傾向が進んでいる根本的な原因は、日本の国際競争力が継続的に低下していることだと言われています。
円安を根本的に解決するには、国を挙げて国際競争力を向上させていく必要があります。
円安時の個人の対策
円安時に個人でできる対策としては、次のことが考えられます。
外貨預金、外国債券
ドルなどの外貨で預金したり、外国債券を購入することです。
外貨や外国債券の方が金利が高い場合にはそもそも有利になりますが、預金時よりも円に交換する時に円安が進行していれば、その利益(為替差益)を受けることができます。ただし、逆に円高が進行した場合には為替差損が発生します。
外国株式投資、外貨建て投資信託
外国の株式を購入したり、外貨建ての投資信託を利用することです。
投資先が成長している企業であればそもそも有利になりますが、購入時よりも円に交換する時に円安が進行していれば、その利益(為替差益)を受けることができます。ただし、逆に円高が進行した場合には為替差損が発生します。
株式の場合、株価が上がり含み益が出ていて、かつ、購入時より円安が進行したときに売却するのが理想的といえます。
円安が有利な企業への株式投資
日本の輸出関連企業、観光業、宿泊業など、円安が追い風になる企業の株式を購入することです。
円安が有利に働く企業は、円安が進行したときに業績が上がり易く、株価の上昇が期待できます。

