2026年1月時点
海と河川が繋がる河口部は、海水と淡水が混じり合う、生物多様性に富んだ汽水域エリアであり、小物も大物も釣れるスポットです。
鱸(スズキ・シーバス)、黒鯛(クロダイ・チヌ)、鰡(ボラ)、鮃(ヒラメ)、真鯒(マゴチ)、メッキ(ロウニンアジ等の幼魚)、サッパ、鱚(キス・シロギス)、ハゼ、コノシロ、鰻(ウナギ)、手長蝦(テナガエビ)などが採捕のターゲットとなります。
以下では、河口域で釣りをする場合の注意点と、遊漁券購入の要否について説明します。

注意事項:採捕制限(罰則あり)
後述する漁業権の有無にかかわらず、河口においては、水産動植物の繁殖、保護のため、その採捕について特別の制限がかけられていることがあります。
採捕制限のある水産動植物は、仮にその釣り場が漁業権の範囲外の区域であったとしても、採捕することができません。
規制の法的根拠は、漁業法第119条、水産資源保護法第4条等に基づき、各都道府県が定める漁業調整規則(内水面漁業調整規則ではありません。)及び漁業法第120条第1項に基づく海区漁業調整委員会指示です。
いずれも公開されており、インターネット等で確認することができます。
例えば、茨城県では、河口付近において、5月1日から12月31日までの間、鮭(サケ)と鱒(マス)の採捕が禁止されています(漁業調整規則+海区漁業調整委員会指示)。
福島県においては、河口の場所に応じて定められた期間、全ての水産動植物の採捕が禁止されています(漁業調整規則)。
これらに違反すると罰則があり、漁業調整規則違反の場合だと6月以下の拘禁刑若しくは10万円以下の罰金に処し、又はこれを併科するとされています。
(漁業調整に関する命令)
第119条 農林水産大臣又は都道府県知事は、漁業調整のため、特定の種類の水産動植物であつて農林水産省令若しくは規則で定めるものの採捕を目的として営む漁業若しくは特定の漁業の方法であつて農林水産省令若しくは規則で定めるものにより営む漁業(水産動植物の採捕に係るものに限る。)を禁止し、又はこれらの漁業について、農林水産省令若しくは規則で定めるところにより、農林水産大臣若しくは都道府県知事の許可を受けなければならないこととすることができる。
2 農林水産大臣又は都道府県知事は、漁業調整のため、次に掲げる事項に関して必要な農林水産省令又は規則を定めることができる。
一 水産動植物の採捕又は処理に関する制限又は禁止(前項の規定により漁業を営むことを禁止すること及び農林水産大臣又は都道府県知事の許可を受けなければならないこととすることを除く。)
二 水産動植物若しくはその製品の販売又は所持に関する制限又は禁止
三 漁具又は漁船に関する制限又は禁止
四 漁業者の数又は資格に関する制限
(以下省略)(海区漁業調整委員会又は連合海区漁業調整委員会の指示)
漁業法
第120条 海区漁業調整委員会又は連合海区漁業調整委員会は、水産動植物の繁殖保護を図り、漁業権(第60条第1項に規定する漁業権をいう。以下同じ。)又は入漁権(同条第7項に規定する入漁権をいう。次条第1項において同じ。)の行使を適切にし、漁場の使用に関する紛争の防止又は解決を図り、その他漁業調整のために必要があると認めるときは、関係者に対し、水産動植物の採捕に関する制限又は禁止、漁業者の数に関する制限、漁場の使用に関する制限その他必要な指示をすることができる。
(以下省略)
河口域での釣りに遊漁券は必要か
多くの河川では、釣りをするのに、その河川において漁業権(一定の水面において特定の漁業を一定の期間排他的に営む権利)を持つ漁業協同組合から遊漁券を購入する必要があります。
一方、海での釣りには遊漁券は不要ですが、河口は、どこからが海でどこまでが河川なのか分かりにくい状況といえます。
漁業権が設定されていない河川の河口
当然ですが、釣りをしようとする河川に漁業権が設定されていなければ、遊漁料を支払う相手がいませんので、海と河川の分かれ目を考えるまでもなく、遊漁券の購入は不要です。
ほとんどの河川には漁業権が設定されていますが、一部設定されていない河川も存在しています。
どの河川に漁業権が設定されているかは、各都道府県がインターネット等で公開している内水面共同漁業権免許状況などを見ることで確認することができます。
漁業権が設定されている河川の河口
上記のとおり、どの河川に漁業権が設定されているかは、各都道府県がインターネット等で公開している内水面共同漁業権免許状況などで確認することができますが、その河川に漁業権が設定されていることが分かれば、次にその漁業権の場所的範囲を確認する必要があります。
漁業権の場所的範囲(漁場)
漁業権は、各都道府県知事の免許によって設定されますが、その際、漁業権の場所的範囲(免許を受けた漁協が漁場とするエリア)が定められます。
漁業権の場所的範囲についても各都道府県がインターネット等で公開している内水面共同漁業権免許状況などで確認することができます。
例えば、福島県を流れる鮫川は、鮫川漁業協同組合が漁業権を持っていますが、その区域は、次のように定められています。
いわき市地内福島県企業局いわき事業所沼部ポンプ場堰堤(北緯36度55分12秒、東経140度45分22秒の点と北緯36度55分9秒、東経140度45分23秒の点を結んだ線)から上流の鮫川本流及び支流のうち福島県の区域並びに鮫川本流と山田川との合流点から上流山田川の区域
これを見ると、鮫川の内、いわき市地内福島県企業局いわき事業所沼部ポンプ場堰堤より下流は、漁業権の範囲外ということになり、その場所での釣りに遊漁券は必要ないということになります。
漁業権の範囲内でも遊漁券が不要な場合
釣りをしようとする場所が、もし漁業権の場所的範囲内であったとしても、ターゲットと釣り方によっては、遊漁券が不要な場合もあります。
一定の河川で漁業を行う免許を受けた漁協が、当該河川において、組合員以外の者(一般人)による遊漁に対し何らかの制限をかける場合、あらかじめ遊漁規則を定め、都道府県知事の認可を受ける必要があります(漁業法第170条第1項)。
(遊漁規則)
漁業法
第170条 内水面における第五種共同漁業※の免許を受けた者は、当該漁場の区域においてその組合員(漁業協同組合連合会にあつては、その会員たる漁業協同組合の組合員)以外の者のする水産動植物の採捕(次項及び第5項において「遊漁」という。)について制限をしようとするときは、遊漁規則を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。
(以下省略)
※ 簡単に言えば、内水面における共同漁業のこと(第168条、第60条第5項第5号)。
そして、遊漁規則には、漁業権の対象となる水産動植物も規定されています。
漁業権が及んでいる河口であったとしても、漁業権の対象となっていない水産動植物の採捕であれば、遊漁券は原則として必要ありません。
各漁協の遊漁規則は、多くの場合インターネットで確認することができます。
上記で例にあげた福島県の鮫川漁業協同組合の遊漁規則であれば、鮎(アユ)、鯉(コイ)、鮒(フナ)、ウグイ、鰻(ウナギ)、岩魚(イワナ)、山女魚(ヤマメ)が漁業権対象魚になっていますので、例えばシーバス(スズキ)の釣りをするのに、遊漁券は基本的には不要ということになります。
しかし、そうすると、漁業権の対象となっている魚を釣っていたとしても、漁場監視員に対し「シーバスを狙っている。」と主張さえすれば、遊漁料の支払を免れてしまいそうですが、そうはいきません。
この点について、行政においては、次の通達が存在します。基本的にはこの解釈に従うのが無難だと思います。
漁業権の内容となっていない魚種を採捕するという名目で漁業権の内容となっている魚種を混獲している場合であって、その遊漁行為が漁業権対象魚種の採捕をも含むと客観的に認定し得るときは、遊漁規則に基づいてきめられた遊漁料を納付させることができる。
昭和38年1月30日 水産庁漁政部長通知
整理すると、漁業権の内容になっていない魚の釣り人から遊漁料を徴収するためには、次の2つの要件を満たす必要があるということになります。
- ① 漁業権の対象になっている魚種を実際に混獲していること
- ② その遊漁行為(釣り方など)が漁業権対象魚種の採捕を含むと客観的に認定しうること
自分のやろうしている釣りが、上記の要件を満たす場合には、たとえ漁業権の対象になっていない魚をターゲットにするとしても、遊漁券を購入する必要があります。特に紛らわしい場合は注意が必要です。

